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印刷術が発明されてから五〇〇年

印刷術が発明されてから五〇〇年にわたってメディアの王者であった本は、マルチメディア時代にどのように位置づけられるだろうか。すくなくとも、文字を読むということに関しては当分の間優位な地位を保ちそうである。これは、本がすぐれているというより、コンピュータ画面が字を読むのにあまりに適さないことによる。字だけでなく、静止画に関しても、コンピュータ画面上の写真表示が現在のカラー印刷の水準に到達するのはかなりの時間がかかるだろう。そして、本ほど、携帯するのが楽な媒体はほかにない。寝床の中でも電車の中でも、そしてトイレの中でも、どこへでももっていけて、読むことができる。また、読むため、使うための装置がいらないことも、大きな特徴だと思う。CD‐ROMはCDROM駆動装置とパソコンがいる。インターネットも回線とパソコンがいる。いやそれに限らない。ビデオにはビデオデッキが、LDはLDプレーヤーがいる。さかのぼれば、レコードはレコードプレーヤーがいる。テレビだって、受像機が絶対に必要だ。つまり、すべて情報を再生するには再生するための機器が必要なのである。ところが、本はそれを読むために特別なプレーヤーがいらない。それ自身が記録媒体でありプレーヤーなのである。この点が本の絶対の強みとなっている。
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